2020年08月05日

 最近、ポピドンヨードによるうがいがCOVID-19感染対策として期待できる、という情報が出ています。
 以前から言われていることですが、ポピドンヨードによるうがいはウイルス感染に対して有効ではありません。ポピドンヨードは粘膜を刺激したり痛めたりすることがありますので、逆に口やのどの粘膜を弱めてしまい、おすすめしません。「濃くすれば効きそうな気がする」と、濃いポピドンヨードでうがいしてしまう人もいるかも知れませんが、これは絶対にやめてください。「有効ではない」を通り越して「有害」ですので…。
 ちなみに、我が国で行われた、うがいはいわゆる「かぜ」の予防効果があるか、という2005年の報告を見てみますと、水うがいは有効である「らしい」という結果が出ている(細かい話をしますと、統計学的にギリギリ有意差が出た、という結果です)のに対して、ポピドンヨードによるうがいは、何もしない群とほぼ同一であり、「水を使ったうがいは意味があるが、ポピドンヨードによるうがいは、うがいを行わないのと同じ」という結果が出ています。対象が400名弱と少ないことと、そもそもうがいに関する報告が少ないので明確なことは言えませんが、少なくとも、ポピドンヨードによるうがいは有効ではないということが示されています。
 ポピドンヨードは確かにウイルスを含めて様々な微生物を死滅させますが、これは試験管内や皮膚でのことであって、粘膜に対しては当てはまりません。ウイルスが粘膜の表面に存在するのは、感染のごく初期の少しの間だけです。すぐに体内に入ってしまいますので、うがいによる効果は期待できないのです。
 うがいの主たる目的は「口の中を清潔に保つ」ことです。ぬるま湯など刺激の少ないもので1日数回行うようにしましょう。

たかおか耳鼻咽喉科クリニック 院長 高岡卓司