2020年09月04日

 COVID-19感染症の感染拡大から半年が経ちます。外出や外食の自粛など、生活パターンが大きく変わった方が多いと思います。
 以前にも触れましたが、生活の変化に伴ってCOVID-19感染症以外の病気が増えてしまっていることはあまり知られていません。米国の医学雑誌に掲載された報告ですが、ニューヨーク州ではCOVID-19感染のピーク3月1日〜4月11日の間、1−2月と比較して心臓病死が398%、糖尿病死が356%増加したそうです。「ステイホーム」によって運動不足になり、食生活が乱れたことが一因と考えられています。

 また、健康への影響は高齢者だけではありません。在宅勤務、テレワークの普及による運動不足、座っている時間が増えたことによる健康障害が大きな問題になっています。
 日本人の大半にとって、通勤は最大の運動です。とある報告では、東京圏のサラリーマンは1日平均173分を通勤に費やしており、通勤による一人あたりの運動量は60%以上になるようです。つまり、多くの人が、生活様式が変わったことによって運動量が半分以下になってしまったということです。
 何よりも「毎日歩くこと」は健康維持や長生きに大切なことで、日本人の多くは、通勤で歩くこと、がその役割を担っていたわけですが、その健康維持の習慣が在宅勤務やテレワークの普及によってなくなりつつあります。

 加えて、在宅勤務が増えれば「座りっぱなし」の時間も増えます。通勤だけではなく、職場では事あることに立ったり座ったりを繰り返します。ですが、自宅にいればソファや椅子に座ったままの時間が多いと思います。
 「座りすぎ」が健康に悪いことは以前から知られていますが、現在では糖尿病や心疾患だけでなく、血栓症や骨粗鬆症などのリスクについても分かっています。

 感染予防のために「新しい生活様式」が広く提唱されていますが、これによる運動不足や過食、加えて「歩かない」「座りすぎ」に注意が向けられることはほとんどありません。
 
 モニターやタブレット端末の画面から離れて、1日1回は外に出て近所を散歩してみてはいかがでしょうか。もちろんまだ暑い日々が続いていますから、熱中症や水分不足には気をつけてください!
 スマホは家に置いて、歩きながら周りの家並み、木々や草花や空を眺めてみてください。毎日歩いている道も一日として同じ風景はありません。また、普段通ったことのない道を歩いてみると、知っているつもりの家の周りでも新しい発見があるものです。そうすればきっと1時間程度の散歩も苦にならず良い気分転換になると思います。
 しばらくこのような状況は続くと思いますが、COVID-19感染症だけに気を付ければ良いわけではありません。普段から「歩くこと」「座りっぱなしでいない」「食べすぎない」といったことに日々気をつけて、身体と心の健康を維持していきましょう。

たかおか耳鼻咽喉科クリニック 院長 高岡卓司