2022年04月22日

 新型コロナウイルスの感染拡大から足掛け3年、我が国では感染が少し落ちついても「今が頑張りどき」「もう少しの我慢」「気の緩みに注意」などとブレーキをかけるような号令ばかりが続き、相変わらず「ステイホーム」「不要不急の外出の自粛」と言った言葉が現役です。マスコミも十年一日のように新規陽性者数を公表し続け、増えた減ったと一喜一憂しています。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は徐々に変化しています。オミクロン株の流行以降、感染力は強いものの重症化は明らかに少なくなっています。厚労省のオープンデータから感染の動向を調べて見ますと、昨年9月までの流行期に比べて今年3月の流行期の重症率は1割程度まで減っているようです(あくまでも生のデータなので信頼性はそこまで高くありませんが)。
 COVID-19の流行には季節性が強く影響することが分かって来ており、欧米諸国ではこれを踏まえて規制緩和の時期を決めています。その欧米諸国よりも感染者数の少ない日本で長期に渡る規制措置は果たして必要なのでしょうか。

 多くの高齢者が、政府による自粛要請を守って家に閉じこもった生活を続けているとの報告があります。私も患者さんとお話ししていると、そういう方が多い印象を受けます。
 COVID-19の拡大に伴い高齢者の身体活動は半分程度まで減少したという報告が筑波大学から出ています。また、COVID-19の拡大後に体重増加、血圧上昇、肝機能の悪化、血糖上昇などが顕著に認められたという臨床医を対象とした調査報告もあります。これらの検査項目は心臓の病気や脳卒中などのリスク要因です。
 また、長期間の自粛生活は生活習慣病や心臓、脳の病気の悪化だけではなく、精神状態にも悪い影響を及ぼします。家にこもっていれば認知症にもなりやすいことは容易に想像出来るでしょう。このまま家にこもる生活を続けていれば日本人は心身ともにますます不健康になり、COVID-19以外の病気が増えてしまいます。

 さらに、活動自粛や在宅勤務による運動不足による悪影響を被るのは高齢者だけではありません。以前にも触れましたが、日本人は運動量の多くを通勤で補っています。在宅勤務が増えれば運動量も減るのです。スポーツ庁から報告されている資料を見ますと、COVID-19拡大に伴って子供を含め各年代でここ2年ほどの体力・運動能力の低下があるようです。今のような生活が続けば、運動不足はさらに大きな問題となってくるでしょう。

 COVID-19を怖がるあまり家にこもっていることで心身が蝕まれてしまい、かえって不健康になるようでは本末転倒です。人間には運動が必要ですし、会話も必要です。

 1日1回は外に出て陽の光を浴びながら歩きましょう!
 外を歩いているだけでCOVID-19に感染することはまずありませんし、すれ違いに挨拶するくらいでも感染しません。屋外ではマスクなしでも良いと思います。人と会話するときや建物に入るときにマスクを付ければ良いのです。これから蒸し暑い季節が来ますから、マスクで熱中症になっては元も子もありません。マスクを付けることだけに拘らず、必要に応じて上手にマスクを使うようにしましょう。

 新型コロナウイルス感染症がゼロになることはありません。おそらく季節性感染症の一つになっていくでしょう。しかしワクチンによって重症化や死を防ぐことが出来ますし、治療法も確立しつつあります。恐れて閉じこもるのではなく、COVID-19の影響を最小限に抑えて暮らしてゆく術を身に着けていくことが大事です。
 外に出て体を動かしたり、人と会話したり、心身ともに健康で穏やかな日々を過ごしましょう!

たかおか耳鼻咽喉科クリニック 院長 高岡卓司