2022年07月11日

 6月末からCOVID-19の患者数が再び増加しているようです。
 まず皆さんにお伝えしたいことは、過度に怖がることは全くないということです。現状ではワクチンを接種されている方であれば重症化することはほとんどなく、今まで通り適切な感染対策をしながら普段どおりの生活を続けていただければ問題ありません。
 ワクチンを接種されていない方は症状が強く出る傾向があるようですので、もしワクチン接種がまだであれば今からでも遅くありませんから是非接種をお願いします。

 COVID-19流行の波はこの先も繰り返すでしょうが、過度の心配は無用です。COVID-19に限らずウイルス感染症には流行の波があります。COVID-19の感染拡大以前は、例えばインフルエンザは冬、はやり目やプール熱は夏、手足口病やヘルパンギーナは夏から秋にかけて増える傾向がありました。それと同じことがCOVID-19でも起こっているのです。今後COVID-19が流行する時期もだんだん定まってくるでしょう。
 つまり、COVID-19の流行は必ずしも人の流れとは関係ない可能性が十分にあるということです。「みんなが外に出るようになったからCOVID-19の患者数が増えた」と思い込んでまた家に閉じこもることはよくありません。過剰な自粛生活の弊害は大きいのです。もちろん何も考えなくて良いということではありませんが、今まで通りの生活を続けていただければ問題ありません。

 新型コロナウイルスが少し体内に入っただけで発症するわけではなく、まずは人間が持っている生体防御機構が何重にも働いてくれますので、感染が成立しない、あるいは感染しても発症せずに過ぎてしまうことも多いのです。さらに、COVID-19感染拡大の初期から小児の重症化は極めて少ないことが分かっており、お子さんにとってCOVID-19はそこまで怖い病気ではありません。
 大事なことは、まず心身ともに健康でいることです。体調に不安があるときはきちんと休養を取るようにしましょう。それに我慢を続けていたりストレスが溜まっていたりすることもよくありませんし、息抜きや気分転換は非常に大事です。
 マスクのことにまた触れざるを得ませんが、おそらく日本ではマスクを過信している、マスクにこだわり過ぎているのでしょう。マスク着用はそこまで重要事項ではなく、感染しやすい環境に留まらないことが一番重要です。そういった環境ではマスクの有無に関わらず感染します。
 COVID-19の感染経路で注意すべきはエアロゾル感染です。ウイルスを含んだエアロゾルが多い空間で感染しやすいので、マスクをしていても感染します。逆に屋外や換気の良いところではエアロゾルが滞留することがありませんから、マスクをしていなくても感染リスクは極めて低いのです。エアロゾル感染に対してはマスクの効果は限定的で、つまりマスクの有無で感染リスクはそこまで差は出ないと考えて良いでしょう。
 感染予防対策として大事なのは、マスクよりも換気です。誰かがウイルスを含んだエアロゾルを出していたとしても、換気によって拡がって薄まってしまえば感染リスクを抑えられますし、屋外ではさらにリスクが低いのでエアロゾル感染はほぼ考えなくて良いのです。

 それよりも、マスクの弊害として一番考えなくてはならないのは、子供の成長発達への影響です。ここ2年余り、子供たちはマスクで相手の顔や表情を見ることはほとんどなく、お喋りすることも制限された生活を続けています。表情を見ること、話すことは感情や情操、こころや言葉、あるいは社会性といったあらゆる発達、成長に極めて重要です。大人と違って子供たちが1年2年で失ったものは取り返しが付きません。COVID-19による重症化や後遺症は小児では極めて少ないわけですから、非常に少ない感染リスクのためにマスクにこだわることで子供の心身の成長発達という大切なものを犠牲にしてはいけません。
 大人たちがマスクをしていたら子供たちもなかなかマスクを外せません。子供たちの未来のために「なんとなく」マスクをするのはやめて、子供同士だけではなく、大人も子供たちの前ではなるべくマスクを外してお互いの表情が見えるように、そしてたくさんお話をするように心がけましょう。
 本格的に蝉も鳴きはじめ、しばらく暑い暑い日々が続きます。感染対策は行き過ぎず適切に、身体も心も健康に過ごせるようにしましょう。

たかおか耳鼻咽喉科クリニック 院長 高岡卓司